私は税理士業界で丸5年ほど働いていて、弥生会計の電話相談センターで働いていたので、会計業界関連というくくりでいうと7年ほどの経験があります。
次に、会計ないしは税理士試験の勉強については、26歳から始めて33歳まで試験勉強をしていました。
私の場合は、公認会計士の試験も受けていましたので、税理士試験単独で考えると5年ほど勉強していたことになります。
そういった経験から、実務と勉強の違いについてお話したいと思います。
●会計事務所に入社を目指す方
●税理士試験が長期化している方
●会計事務所の仕事について良く分からない経営者の方
●会計事務所に勤務している方
目次
私の会計事務所の新人時代
入社2ヶ月目で法人の決算を組んだ
私が初めて勤務した会計事務所は、所長1人従業員が4人ほどの小さい事務所でした。
この時点では、税理士試験の状況は簿財の2科目持ちで法人税法の結果待ちという状況でした。
一番びっくりしたことは、会計事務所入社2ヶ月目で、年商2億ほどの酒屋さんの決算を任されたことでした。
ただ、私は法人税の勉強をしていましたので、余裕で決算が出来ると思っていました。
法人税法では、連結法人税とかグループ法人税制の勉強もしていましたので、中小企業の決算など簡単だと正直なめてました。
付箋がライオンのタテガミのよう
しかし、そんな私の自信は見事に粉砕されました。
申告が残り5日、4日と迫ってきます。
当時の事務所では、ミシン目のついた元帳を専用のぶ厚いバインダーに挟んでベテランの番頭さんにチェックして貰うという方法で決算作業をしていました。
何回提出したことでしょう。
定時の18時はもちろん過ぎて、まるでライオンのタテガミのように付箋のついたバインダーが返ってきます。
指摘されたポイントとしては勘定科目の間違い、摘要の名前間違えなど、ほんとにこんなところよく気づきましたねと思いました。
複式簿記だから1箇所だけの修正では終わらない
指摘ポイントを修正して、再度、ミシン目のついた元帳を印刷し直して提出します。
次は、タテガミが半分ほどなくなったぐらいで返ってきます。
その繰り返しです。
会計は複式簿記になりますので、1つ修正するとまた別のところの修正も必要になって、さらに法人税の申告書の数字も連動していきます。
なので、1つの修正が発生してそこだけ直しても完成しません。
1つ修正があれば、また全体を見直さないといけません。
会計事務所入社1年目の新人さんがまずぶち当たる壁だと思います。
先輩が手伝ってくれた
そんなこんなで、ようやく完成させます。
見かねた中堅の先輩が手伝ってくれたりしました。
そこで、実務と税理士試験の勉強との違いを痛感させられました。
会計事務所の実務と税理士試験の違い
会計事務所の実務 | 税理士試験 | |
---|---|---|
目的 | クライアントの会社名、取引先の名前はもちろん、最新の税法によって税金が最小になるように申告すること。 | 想定された問題について、実務で使う使わないにかかわらず、税理士試験で点数を稼ぐために出題された問題に対応するように座学をすること。 |
対象となる主な会社 | 個人事業主~中小企業 | 個人事業主~連結、グループ法人税制の適用になる会社 |
目的が違うことを意識する
会計事務所の実務と税理士試験はそもそも最終目的が違います。
実務の場合は、クライアントから依頼を受けて代理申請をします。
税理士試験は、想定された問題をまるで自分が経営する会社を申告するような立場で回答します。
実務に入りたての新人さんの間違いが多いのは、会社名や代表者名を間違えたりするところです。
税理士試験しかやっていないと、ここらへんの感覚が養われません。
元々知らない人の申告をさも自分の申告のように代理申告するということは、非常に大変なことです。
ただ、実務経験が浅い新人さんの場合、数字を合わせることに集中して、このような事は些細なことのように思いがちです。
ビジネスマナーが求められる
ただ、逆の立場ではどうでしょうか。
けっして安くない金額を顧問料として支払っているのに、自分の名前が間違えられた申告書が作られたら。
そんな申告書を作成する会計事務所を信用出来ますか?
数字はもちろん大切なのですが、クライアントの名前、従業員さんの名前を間違えない。
ほとんどビジネスマナーのレベルですが、こういったところがサービス業としては非常に大事なことだと思います。
税理士勉強の内容で使える知識は一部
次に会社の規模の違いですが、私は、実務経験5年で一社も連結法人ならびにグループ法人税制の適用を受ける会社を担当したことはありません。
述べ100社以上担当しましたが、1社も上記の税法の適用をした会社はありませんでした。
マニアックな話をいうと税効果会計の適用されるような会社もお目にかかったことはありません。
税理士試験の法人税法の勉強では、連結、グループ法人税制などについて、これでもかというほど勉強しましたが、実務になると1度も使わなくなります。
例えば、法人税を勉強して、たまたま10年後に連結について申告をすることになったとして、はたして当時の勉強が活かせるのか?
私はきれいさっぱり忘れている自信があります。
税理士試験の長期化は問題あり
税理士試験の毎年の合格人数は1,000人前後の試験になります。
もちろん、毎年、大量の不合格者がいます。
しかし、長期的に学習を続けても実務スキルは向上しません。
その税理士試験のために何年も費やすのは賢明な判断とは言えません。
特に法人税については税理士試験の中でも最強クラスの難易度であると私は思っています。
しかも、合格できたとしても勉強した内容を全て実務で使えるわけではありません。
まとめ
税理士試験の勉強と実務で求められるスキルは違います。
実務はクライアントの代理申請をしていて、税理士試験では求められていないビジネスマナーが求められます。
特に最近は税理士業界は競争が激化しているので、数字を合わせるだけのサービスでは競争に負けて淘汰されてしまいます。
時代に合わせてサービスを見直して、自分のスキルも常に磨いていく必要があると言えます。
スキー検定2級持ち、現在1級挑戦中の税理士・行政書士です。
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