こんにちは!
みつばち会計事務所の丸山です。
税金の世界には一般常識で考えると納得できないことがたくさん存在します。
その中の一つが夫婦間の事業経費の扱いになります。
これは、端的に説明すると夫婦間の報酬のやりとりは法律に沿った方法でないと認めないというものです。
順番に見ていきましょう。
平成16年11月2日弁護士夫婦事件
この事件はあまりにも有名な事件です。
なんと法律の専門家である弁護士のしかも夫婦が税金の申告について、税務署から指摘を受けたことを不服として最高裁まで争った事件になります。
簡単に税金の裁判の仕組みを説明すると、国税不服審判所というものがあって税務署の判断に納得がいかない場合は、例外なくこの国税不服審判所に行くことになります。
そこでも納得がいかない場合は、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所へと進んでいきます。
少し想像してみてください。
自分の申告についてもし税務署から指摘を受けたとして最高裁判所まで争おうと思いますか。
ほとんどの場合、税務署の指摘に従って修正申告をしますよね。
この弁護士夫婦事件は、国税不服審判所で納得がいかず、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所まで計4回訴えを行なった事件です。
訴えた弁護士の人の気持ちを察するに全く納得いかない事件だったことが容易に想像できます。
では、結果はどうだったかというと。。
弁護士の全敗です。
一度も税務署の主張を覆すことができずに負けることになりました。
所得税法56条
裁判での争点は所得税法56条になります。
この法律を簡単にいうと夫婦間で行う報酬の受け渡しは認めないというモノになります。
弁護士夫婦事件において弁護士夫婦は客観的に見て完全に独立していました。
弁護士の夫は事務所を構えていて、Aという弁護士会に所属し、弁護士の妻も別のところで事務所を構えて、Bという弁護士会に所属していたからです。
それにもかかわらず、所得税法56条によって夫婦は同じ財布なので金銭のやりとりは一切認められず、弁護士の夫が事業収入の申告の際に経費として申告をした弁護士の妻に対する報酬が否定されたのです。
夫婦間の金銭のやりとりを経費にする方法
客観的に見て完全に独立しているであろう夫婦間の金銭のやりとりが完全に否定されたわけです。
では、夫婦間の金銭のやりとりを経費に入れることはできないのでしょうか。
個人で事業をしていたら奥さんが手伝ったりする場合はありますよね。
そんな場合は、専従者給与という方法で経費に入れることができます。
厳密に言うと青色申告をしている場合でないと従者給与を支払うことはできないのですが、白色申告であっても奥さんもしくは事業を手伝ってくれる人がいれば配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら50万円を限度として控除することができます。
専従者給与についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
なお、この青色申告の際に奥さんに対する給与を経費に入れる場合は税務署に届け出が必要なので注意が必要です。
提出期限は、青色申告の届出書と同じなので該当する人は一緒に提出するといいと思います。
実は、これは所得税法57条に規定されているモノが根拠になっています。
裁判の中でも夫婦に支払う金銭というのはこの所得税法57条が補完しているからと言うある種根拠付けの一つとしても使われています。
夫婦間の金銭のやりとりは青色申告の中で処理してねと言うことですね。
このように個人事業の場合は夫婦間の報酬のやりとりが一切認められないことから、時代の流れを反映していないある種時代錯誤的な法律なので批判の多いモノになっています。
まとめ
平成16年に弁護士夫婦事件と言われる税金の申告を巡る裁判がありました。
この裁判の根本原因は所得税法56条が夫婦間の金銭のやりとりを一切認めていないためです。
個人事業で夫婦間の金銭のやりとりを経費にするためには専従者給与という方法をとる必要があります。
働き方が多様になる中で、ある種時代錯誤的な法律として批判の多いのも事実になります。
編集後記
所得税法56条には「生計を一にする」かどうかが議論されることがありますが、裁判結果は、夫婦は絶対に生計を一にすると取れる判断しているとみれるため、夫婦間の報酬のやりとりについては議論の余地がないように感じます。
息子(2歳)の成長日記
昨日は夜、オンラインコンサルでしたが、終わるとすぐに一緒に寝ようと誘ってきます。
一日一考
法律の規定などを単純に話すと何の面白みもないですが、切り口を変えると話せる内容になるのかなと感じています。
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