みつばち会計事務所の丸山です
税理士に登録したらまず受講しないといけないのが登録時研修になります
この研修は全国共通のカリキュラムで朝9時から夜の17時まで1日かけて3日連続で行われます
今日は2日目で受けた租税法の講義の中から印象に残ったことについてまとめました
租税の世界は縦社会
登録時研修2日目は 同志社大学教授で税法を専門に研究しておられる田中治教授の講義から始まりました
レジュメが渡されましたが これまで巻末に田中教授が書かれた論文や論評が数多く記されていて 税理であるとか 税務通信と言った税務の専門雑誌から単行本などいくつも執筆されていました
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まず 田中教授がおっしゃっていた言葉で印象的だったのが 『今からお伝えすることは金子教授の概念などに対し持論を展開するわけではなく』という風に話されていました
同志社大学の教授で多数の著書を書かれている著名な教授であっても 金子教授というのが 絶対的な存在で税法分野という領域に置いてどれだけ影響力があるかというのが分かると思います
それと同時に租税という学問が理系の研究の様に過程と結果が全てというわけではなく 先行研究が大事で前を歩いている先生の概念の影響力が強く 持論だけでは成り立たない世界ということがわかります
そう考えると 大学院を受験しようとする方たちが自説のみを展開して教授を納得させようとすることがいかに無謀なことかというのが分かると思います
免税事業者の課税売上高(租税判例百選No84)
実は田中教授は租税判例百選にも寄稿されています
それは租税判例百選No84の消費税について争われた最高裁判例平成17年に判決がされた裁判についてです
この判例の概要ですが当時の消費税の免税点が基準期間の課税売上が3000万円以下かどうかでした
納税者Xは基準期間は免税事業者で売上が3000万円を少し超えていました
しかし Xは売上の一部は消費税なので課税売上は3000万円以下なので消費税の納税義務を負わないとして消費税の申告をしなかったことから訴訟に発展した事例です
結果としてはXの主張は認められず消費税の納税義務について免税事業者の時期については消費税の金額を含めた総額で判断するとされました
田中教授の考える問題点
この事例について 田中教授は条文に詳細が書かれていないことが問題という点について時間を掛けて説明をされておられました
その説明の中では 消費税法第9条の条文(抜粋)が『事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、消費税を納める義務を免除する。』になり
今回の事例の論点は 免税事業者と課税事業者の場合に 課税売上高の判定が変わるのかどうかと言うところになります
判例では 免税事業者の場合は総額で判断するというところになりますが
この点について田中教授は 条文自体に課税事業者と免税事業者の場合分けがされていない点が問題であるという風におっしゃっています
消費税法第9条では【事業者】とだけ記載されています
そしてこの判例のあとに施行令で免税事業者の課税売上の計算方法について細かく規程されたという歴史になります
つまり 消費税法第9条の条文で書けなければ仕方ないのですが 【事業者】とだけ規程するのではなく 課税事業者は消費税額を控除した金額で判定して免税事業者は消費税を含んだ金額で判定すると消費税書けばいいのに それを条文の中に書いていないことが問題点とおっしゃっていました
なるほどなと思いました
田中教授は続けて 条文の改正であれば世論が反応するのに施行令の改正について世論は反応しないことについても問題視されていました
田中教授が問題視されていた条文他
所得税法12条(条文ママ)の『資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。』
について田中教授は 所得税については全て収入すべき金額が所得になるわけですがその条文として所得税法に規程されている条文がこれだけというのは少なすぎると解説された上でこの条文の読みにくさについて言及されていました
所得税法12条は所得税における実質所得者課税の原則の根拠となる条文と言われていますが この条文を読んで一般納税者が なるほどこれが収入になってこれがならないのかと判断できるわけがありませんよね
租税の教授がどの様なところを問題と感じているのか少しでも感じていただければと思います
特に会計事務所経験が多い人ほど実務的に影響がある役員報酬の定期同額給与や消費税の課税非課税の問題を重視する傾向がありますが 租税の教授は条文についての問題点に着目して研究されていることに注意して研究計画書作成をしていただければと思います
田中教授ほどの教授でも税法はカッコ書きなどの例外の規定も多く非常に難解な法律とおっしゃていました
これから大学院入試を目指される方は高名な教授ですら悩むのだから研究計画書を書くのに悩んであたり前という姿勢で取り組めば気持ちが楽になるかもしれませんね
まとめ
租税の世界は先行研究ありきのの縦社会になります
なので教授や専門家が書かれた本などを読まずに租税について記述するということはありえません
租税の教授のトップは金子教授になります
何から手をつけていいか分からないという場合はまずは金子教授が書かれた入門書の税法入門は安価ですしおすすめです
編集後記
本日は登録時研修3日目です
今日も税法分野で有名な大阪大学大学院教授の谷口教授の講義が聞けるので楽しみです
息子(2歳)の成長日記
写真に撮れなくて残念だったのですが床暖房の気持ちよさを体全体で感じる様に寝転んだ姿が可愛かったです
一日一考
大学院で租税法の勉強をしていると登録時研修の講義がとても分かりやすくなります
スキー検定2級持ち、現在1級挑戦中の税理士・行政書士です。
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既婚で、7歳の男の子と3歳の女の子の父親です。
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