【書評】中小零細企業の融資判断事例集の中から事例3つをピックアップ紹介

著者の井村さんは銀行に入行して27年目の時にこの事例集を執筆されている、いわば、融資の大ベテランになります。

 

こうした豊富な経験をもとに、本著では事例が実に35事例上げられており、例えば不動産担保が確保できるケースで7事例、取引ぶりが良好なケースで7事例など、大きなテーマに分蹴られているため、自社の状況に合わせて自分が知りたい融資のポイントについてだけ読める形式になっています。

 

今回は、その中から私が特に興味があった「保証付融資」「後ろ向き資金」「個人資産」の3つの事例についてわかりやすく紹介したいと思います。

前書き

まずは、本著の前書き井村さんが書かれている言葉で印象的だったものを上げておきます。

 

大企業の場合は、極端に言えば決算分析だけで融資の判断が可能ですが、中小零細企業においては、決算分析だけでは融資の判断はできません。むしろ、決算分析だけで融資の可否判断を行うことは危険とさえ言えます。

 

強い節税意識や経営者個人との関係などが絡んできますから、中小零細企業の決算分析だけでは正しい実態分析や資金繰り検証ができないのです。したがって、なおさら融資の拠り所が大切になってくるのです。

 

事例の中でもこの前書きで書かれている部分が強く現れている箇所が随所に出てきます。

 

融資の拠り所とは、つまり企業がなぜ融資が必要なのかを掴むことです。

 

翻って、融資を受けたい社長からすれば融資担当者がこのように考えていることがわかればスムーズに銀行から融資を受けることができると言うことになります。

 

保証協会付融資のケース【事例17】

融資には、信用保証協会が付く場合と付かない場合があります。

 

付かない場合はプロパー融資と言われ、企業の社長はプロパー融資を受けること一つも目標とする方も多いです。

 

事例17では、信用保証協会付き融資の限度額(無担保の場合は8,000万円が限度)を超えての融資の申し入れがあった際に対応された話についてになります。

 

融資の申込をしたのは内装工事業者で工事の受注増加に伴って追加で3,000万円の融資の依頼がきたそうです。

 

将来性もありぜひ融資を実行したかったのですが、銀行もプロパーで5,000万円融資していたため単独での3,000万の融資は厳しかったのです。

 

そこで、保証協会と銀行で1,500万円ずつの協調融資をすることにしたそうです。

 

こうすることで、保証協会も銀行がプロパー融資をして会社の管理をすることで安心して限度額以上の借入を実行することができるようと言うことです。

 

後ろ向き資金【事例19】

この事例は接骨院の2代目社長が順調に店舗数を増やして行っていた際に不景気の影響によって、借入の返済がしんどくなりキャッシュフローが悪化していた時の融資の案件なります。

 

景気の影響を受けやすかったり競合の多い業界は一時は良くても、景気が悪くなってくると途端にキャッシュフローが悪化して黒字倒産になるケースもあると思います。

 

そんな時に現状の資金繰りを解消し、複数の借入を一本化して返済金額を圧縮したり、当面の借入の返済のための資金を融資することを俗に後ろ向き資金と言います。

 

事例19のケースで、井村さんは社長の人柄がよく、その人柄を買ってなんとか融資を実行したいと感じていたそうです。

 

そこで、まず社長の事業計画のヒヤリングを行ったそうです。

 

すると社長も会社の現状の資金繰りの悪さを自覚しており、今までと同じように新規出店することではなく既存店舗の立て直しのイメージを持たれていたそうです。

 

さらに2代目と創業者の不動産の確認も行った上である程度の回収原資も見込めることからこの後ろ向き資金の融資の実行が可能になったそうです。

 

個人資産背景が認められるケース【事例25】

以前受講したセミナーでも融資コンサルタントとしてご活躍されている諸留税理士が融資は1にも2にも決算書だとおっしゃっていました。

 

銀行融資において、決算書でまず確認する項目は黒字か赤字かになります。

 

もちろん黒字だからと言って鵜呑みにするわけではなく、内容を確認した上で黒字かどうか判断されることになります。

 

事例25では、融資の実行が難しくなる2期連続赤字の際の融資の申込を受けたケースになります。

 

結果から言うと社長個人の2,000万円の定期預金の融資先の銀行口座への預け替えをすることによって融資は実行されました。

 

ここでは中小企業特有の状況と言うのが説明されています。

 

それは大企業とは違い中小企業は法人と個人の境目がないケースが多いと言うことです。

 

そのため個人の資産の担保余力(登記簿謄本上の不動産価値や現金)の把握することで2期連続赤字の場合でも融資が実行できる例があることが説明されています。

 

 書籍情報

井村清志(2014)『中小零細企業の融資判断事例集 -35のケースで学ぶ融資判断の勘どころ』    (株)近代セールス社

 

 

 

まとめ

融資経験27年は伊達ではありません。

 

一つ一つの事例が業種や状況、融資申込みの際の経営状況などが具体的に記載されています。

 

融資に強くなりたい税理士、融資についてもっと詳しくなりたい経営者にとっての良書であることに間違いはありません。

 

編集後記

本の目次の重要性を感じた一冊でした。

 

読みやすい本と言うのは読みやすい目次があることが大切だと思います。

 

 

息子(2歳)の成長日記

最近、インフルエンザなどでお世話することが多くなり、お母さんがいるのにお父さん抱っこと言ってくるようになりました。

 

一日一考

なんとか平日5日毎日銀行融資関係で書き切ることができました。

なんか縛りをつけると土日めっちゃ自由にブログ書きたいと思いました。

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