がんばる税っ!
みつばち会計事務所の丸山です。
今日は、大学院の授業で扱われることも多い通称「馬券訴訟」から所得税における経費についてみて行きたいと思います。
ターゲット
今から大学院を目指される税理士受験生。
副業をしている人。
青色申告を検討している人。
参考文献
田中治「一時所得と雑所得の区別」租税判例百選【第6版】p.88
馬券訴訟とは
馬券訴訟とは、遊びの範囲を超えて専用の馬券購入ソフトなどを利用して継続的に馬券の購入をして利益を得ていた場合に当たり馬券や外れ馬券が経費になるかどうかの裁判のことを言います。
いくつか裁判で争われていますが、金額も高額で有名な裁判があります。
それは、平成27年3月10日に最高裁判決が出た事件になります。
簡単な事件の内容
この事件では、馬券をインターネットで購入を繰り返していてその懸賞金について無申告だったために無申告犯として裁判で争われました。
この事件が有名なのは、競馬の懸賞金という所得税申告ではあまり馴染みのないものであることもさることながら、その金額が高額だったことが大きいです。
なんと、この被告人は、平成19年から平成21年までの3年間の間に当てた懸賞金は、約30億1000 万円。これに対して、3年間を通じ購入した全馬券の購入金額は、 約28億7000万円でした。
一般的に趣味で万馬券が来て喜ぶようなレベルではなかったということです。
一時所得と判断された場合
競馬などの懸賞金は一般的な申告では一時所得として扱われます。
一時所得となるとこのような計算式で税金が計算されます。
懸賞金ー当たり馬券ー50万円=もうけ
つまり、今回の事件では、全馬券の購入金額である約28億7000万円は懸賞金に対する経費としては認められなくなるわけです。
その結果、今回の事件の場合、外れ馬券だけが経費となるため約14億6000万円がもうけになって、これに対応して納付すべき税額は約5億7000万円となってしまいます。
実際のもうけは、1億4000万円にもかかわらず所得税はその3倍ほどの約5億7000万円になるわけです。
実際に被告人が儲けた金額
約30億1000 万円ー 約28億7000万円=1億4000万円
被告人からするとたまったものではありません。
もうけた金額全額を使って納税しても4億3000万のマイナスです。
確実に自己破産になります。
雑所得と判断された場合
なので、被告人は、最高裁まで一貫してこのもうけは雑所得であると主張しました。
雑所得となるとこのような計算式で税金が計算されます。
懸賞金ー外れ馬券も含めた全ての馬券=もうけ
雑所得と判断された場合は、懸賞金を獲得するために必要と判断される馬券について全て経費として認められます。
つまり、今回の事件では、全馬券の購入金額である約28億7000万円は懸賞金に対する経費としては認められるわけです。
その結果、今回の事件の場合、約1億4000万円がもうけになり、これに対応して納付すべき所得税額は約5000万円となります。
これでも、かなりの納税額ですが被告人の主張もなんとなく納得できます。
裁判の結末は
裁判の結果は被告人の主張が認められました。
裁判官は、この事例について『外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有する』として被告人のもうけについては一時所得には該当せず、雑所得に該当するとしました。
雑所得というのは、事業や給与などの所得に該当しない所得になります。
つまり、今回の取引は一時的、突発的に儲けた金額ではなくて経済活動を伴っているため、一時所得には該当しないと判断されたということになります。
私は、これは取引の実態に応じて判断された所得税の趣旨に沿った判決だと思います。
検察側は、一審から通じて懸賞金は一時所得になるという型にハマった主張をしていましたが、裁判では取引の実態を確認した上で冷静な判断がされたと思います。
まとめ
所得税では、もうけが何の所得に区分されるかで税金の計算方法が変わり税額も変わります。
今回の事件は金額も大きく最高裁まで発展した刑事事件として有名なものです。
いずれにしろ、儲かりそうなら事前に専門家なりに確認しておくことが転ばぬ先の杖ということになりそうですね。
息子(2歳5ヶ月)の成長日記
明日は保育園の生活発表会で、僕の父と母と一緒に見に行きます。
去年は練習では歌えていたのに、本番一言も喋りませんでした。
今年はどうなるのか楽しみです。
スキー検定2級持ち、現在1級挑戦中の税理士・行政書士です。
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既婚で、7歳の男の子と3歳の女の子の父親です。
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