先日、高等裁判所でクライアントに対してDESの提案した税理士法人に対して3億3000万円の損害賠償請求が言い渡されました。
<速報>相続税対策を提案した税理士法人に、再び約3億3,000万円の損害賠償命令 ~高裁が地裁の判決を全面支持、最高裁は絶望的かと言う記事です。税理士は提案ミスをすると報酬以上の損害賠償が来るので気を引き閉めて仕事しないと怖いですよね。https://t.co/Qibif7U6po pic.twitter.com/ueFEI0qcng
— 大野晃/税理士2.0YouTuber/経営コンサルタント/ビジネスプロデューサー/講演家/著者/ (@zeirishi2) August 29, 2019
この税理士法人は上告する構えですが、地方裁、高裁と連続して敗訴したため一部の記事では上告してもそのまま請求が確定する可能性が高いと言われています。
そもそもDESって何でしょうか(笑)
今日はそこに焦点を当てて記事を書いてみました。
3億3000万円賠償の事件のあらすじ
金額ばかりが取り沙汰されていますが、DESというのは相続税対策として用いられている会計手法になります。
当時クライアントの会社から相続税対策を相談されたこの税理士法人は相続税の節税のためにDESを提案しました。
DESの仕分け
まず、相続時に個人が会社なのに貸し付けている財産は相続財産としてカウントされます。
そこでDESにより、この貸し付けた財産をその会社の株式に変えることで相続財産の価値を減らすことを目的に行われます。
仕分けで言うと以下のような形になります。
①
社長が会社に貸し付けた金額(相続財産) 100 / 株式(資本金) 100
実際にお金が動いているわけではないため机上でこのような処理ができればいいのですがそこは問屋(税務署)がおろしません。
税務署もこのような状況を想定していて基本的には個人と法人間におけるDESは時価評価しなさいとされています。
少し細かいですが税務上、現物出資が行われた場合には適格・非適格の判定が行われます。
そして、この判定を行うとそもそもB役員は法人ではありませんから、非適格現物出資に該当することになります。(適格・非適格判定については割愛します)
税理士法人Sofa
つまり仕分けで言うと以下のようになるわけです。
②
社長が会社に貸し付けた金額(相続財産) 100 / 株式(資本金) 10
/ 差額が法人の利益 90
同じ取引をやったとしても時価で評価するかどうかで利益が出るかどうかが変わります。
DESでやりたいこと
今回の事件においてDESでやりたかったことは高齢の創業者が亡くなった際の相続税の節税になります。
そこで、DESを実行した場合の高齢の創業者の仕分けをしてみるとDESをする理由が分かります。
③
株式(相続財産) 10 / 会社に貸し付けた金額(債権放棄) 100
差額は損失 90 /
DESを行うことでもともと会社に貸し付けていた財産がその時の株式の時価に置き変わります。
例えば、赤字続きの会社なのであればこうすることで相続財産の評価を下げることができるという仕組みです。
今回の事件の争点
今回の事件の流れは、以下のようになります。
同年 8月 DES実行(同日、元社長の息子がA社代表取締役に就任)
・元社長の債権9億9000万円をA社に現物出資
・A社はこれを受入れ普通株式4億9500万株を第三者割当発行
・これによりA社の資本金は2000万円から5億1500万円に
(2カ月後に再び2000万円に減資)
同年11月 元社長死亡
・相続税申告の手続き過程でDESによりA社に債務消滅益が発生していることが判明
平成24年 6月 法人税確定申告(DESがなかった前提の内容)
?月 相続税申告(DESによる債務消滅を前提とする内容)
11月 法人税修正申告(DESによる債務消滅益の発生を前提とする内容)
平成25年 2月 A社、I税理士法人に対し損害賠償請求→提訴へ
KaikeiZineより引用
注目したいのは、平成24年にこの税理士法人が行ったとされる申告内容についてになります。
この平成24年の申告に前段落までに記載した仕訳番号をあてはめていきたいと思います。
平成24年 6月 法人税確定申告(DESがなかった前提の内容)
⇒
①
社長が会社に貸し付けた金額(相続財産) 100 / 株式(資本金) 100
平成24 ?月 相続税申告(DESによる債務消滅を前提とする内容)
⇒
③
株式(相続財産) 10 / 会社に貸し付けた金額(債権放棄) 100
差額は損失 90 /
平成24 11月 法人税修正申告(DESによる債務消滅益の発生を前提とする内容)
⇒
②
社長が会社に貸し付けた金額(相続財産) 100 / 株式(資本金) 10
/ 差額が法人の利益 90
金額は全然違いますが、今回の事件の流れを仕分けに起こすとこんな感じになります。
平成24年の何月かは分かりませんが、相続税の申告をすることでかなりの節税?が出来たということでしたが、その後、別の税理士法人から指摘を受けた今回の税理士法人は慌てて平成24年11月に差額が利益になるとして③として法人税の申告をやり直したということになります。
まとめ
今回の事件は法人税も相続税でも得をして一挙両得しようとした思惑が見え隠れしています。
ただ一般的な感覚で考えるとやりすぎじゃないのと考えられる内容とも言えます。
実務家も納税者もDESというなんかかっこいい名前に騙されず、一般常識で物事を捉える必要があると思わして貰える事件だと思います。
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