62億!りそな外国税額控除-最高裁で逆転判決!クック諸島の税金の行方はいかに-
以下の判例は、岡村忠生(2016)「租税法規の限定解釈―りそな外税控除否認事件」『租税判例百選[第6版]』別冊ジュリ228号 ㈱有斐閣 p38-39を参照させて頂いています。
☆複雑な事例になるため、TOMOYUKIが事件の概要を解説しています。☆
課題判決の概要
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【登場人物の整理】
X=りそな銀行(当時:大和銀行)
A=親会社
B=Aの100%出資法人
C=Aが28%の株式を保有する会社
【取引の流れ】
XがBに約62億円(平成5年1月4日のレート124.85円/ドルで換算)を貸し付けてそれをCが返済する
※CがBに貸し付けると、クック島の源泉所得税(15%)が掛かる
↓
XがBに貸し付けるとき、クック島の源泉所得税が課税される
↓
Xは課税された源泉所得税を外国税額控除制度により、全額税額控除した。
※源泉所得税は利息に対する15%なので、1年で約1億円税額控除していたこととなる。今回の判決では、3年間について争われているため、合計約3億円+罰金が科されるかどうかの裁判となる。
課題判決の原文
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最高裁平成17年12月19日第二小法廷判決(平成15年(行ヒ)第215号:法人税更正処分取消請求事件)
破棄自判
(i)「法人税法69条の定める外国税額控除の制度は、内国法人が外国法人税を納付することとなる場合に、一定の限度で、その外国法人税の額を我が国の法人税の額から控除するという制度である。これは、同一の所得に対する国際的二重課税を排斥し、かつ、事業活動に対する税制の中立性を確保しようとする政策目的に基づく制度である。」
(ii)「ところが、本件取引は、全体としてみれば、本来は外国法人が負担すべき外国法人税について我が国の銀行であるXが対価を得て引き受け、その負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税額を減らすことによって免れ、最終的に利益を得ようとするものであるということができる。これは、我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上、この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が享受するために、取引自体によっては外国法人税を負担すれば損失が生ずるだけであるという本件取引をあえて行うというものであって、我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは、外国税額控除制度を濫用するものであり、さらには、税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」
課題判決で否認された簡単な流れ
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①Xが行った取引は、外国税額控除制度がなければ損をしてしまう取引
↓
②①の取引は、外国税額控除制度の趣旨を著しく逸脱している
↓
③①のした行為は、外国税額控除制度を濫用している。
↓
④なので、税額控除は認められない。
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※補足
限定解釈とは
課税法律主義(=租税法律主義)