研究計画書のテーマに消費税ってどうなの?―氏ないし通称のみで記載された帳簿と仕入税額控除―

以下の判例は、加藤歌子(2008)「氏ないし通称のみで記載された帳簿と仕入税額控除」税務弘報 Vol.56-No3を参照させて頂いています。

☆TOMOYUKIが事件の概要を解説しています。☆

 

 

課題判決の概要

概要を確認する。
消費税の税額の計算は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を控除した金額になります。

そして、仕入に係る消費税を控除するためには、帳簿を作成する必要があります。

今回、主人公である納税義務者は、アワビ・サザエ・ナマコ等の底生魚介類を買い入れて魚市場に出荷するいわゆる卸売り業を行っていました。

そして、帳簿付けは、判取帳というものに仕入先の名前、金額、海産物の種類などを記帳していました。

しかし、記載されていた個人名は、実は、グループ名であったり複数の個人に対して使用しており、個人を特定できる内容ではありませんでした。

このような場合、仕入に係る消費税は全額認められないのか、少しだけ認められるのか。

そのような点について争われた判決になります。

 

課題判決の原文

判決の原文を見る。
高松地裁平成10年9月28日判決(平成8年(行ウ)第1号:消費税課税処分取消請求事件)

ⅰ)消費税法30条8項1号は仕入税額控除のための帳簿の記載事項として、(a)課税仕入れの相手方の氏名又は名称、(b)課税仕入れを行った年月日、(c)課税仕入れに係る資産又は役務の内容、(d)課税仕入れに係る支払対価の額を掲げている。同条7項の趣旨からすれば、これらの記載の程度としては、事業者の仕入取引につき課税仕入取引であるかどうかが帳簿の記載自体から明らかで、これにより控除対象仕入税額を算定できる程度の記載が必要であると解される(なお、帳簿は、右法定記載事項を記録したものであれば足りるので、必ずしも一冊の帳簿でなくとも差し支えなく(基本通達11-6-1(注書き))

Ⅱ)本件における判取帳の記載は消費税法30条8項1号イ所定の課税仕入れの相手方の『氏名又は名称』の記載を欠き、また、本件処分時においては判取帳以外に本件取引の相手方の氏名又は名称を記載した同条7項所定の帳簿ないし請求書等の保存はなく、また、右保存がないことについての『やむを得ない事情』(同条項但書)があると認めるにも足りないから、本件取引につき同条一項の仕入税額控除の適用はない。

 

 

 

消費税のテーマは、ありかなしか

条文数の比較

 

裁判に進む租税訴訟の割合

 

租税訴訟が始まって最高裁まで進むまでの流れ

租税の判例は、すぐに裁判に進むわけではなく、税務調査などで税務署から課税処分を受けた納税者が、その処分に不服がある納税者が、国税庁の機関である不服審判所で争うことが出来ます。

そして、不服審判所の裁決になっとくできない場合に裁判所に進むという形になります。

下の赤い枠に進む割合が、消費税は45%しかないということになります。

なので、消費税について裁決があった場合は、あまり反論しても覆りにくいと言えると思います。

不服審判所

 

消費税をテーマにするのはオススメしない

消費税は、条文数もすくなく判例数もすくないです。

さらに税金の計算も単純なため、条文の解釈についての争いが少ないです。

なので、研究計画書の段階で消費税のテーマは避けた方が無難と言えます。

入学が決まってからテーマを変えることは可能なので、消費税のテーマがどうしてもやりたいということなら、入学後にテーマを変えればいいです。

私はそうでした(笑)

【税法初心者必見】税理士免除大学院、研究計画書のテーマの選び方

私が提出した税理士免除大学院・研究計画書の書き方、その7つのポイント!?

 

 

番外編ー推計課税は出来ないのかー

推計課税の条文

推計課税とは、簡単にいうと、仕入について何らかの理由で計算が出来ない場合に、同業者の仕入の比率などから売上から控除する仕入の金額を控除する計算方法のことを言います。

以下は、法人税と所得税の推計課税の条文番号で、消費税については条文で認められていないということが分かります。

消費税に推計課税が認められない原因の1つに消費税が他人の税金を預かっていると考えられているためです。

そのため、法人税や所得税では認められる推計課税は消費税には認められていないと考えることも出来ます。

ちなみに、相続税にも推計課税の条文はありません。

推計課税

 

判取帳とは

江戸時代から商家,商店などで用いられた商業帳簿の一種。大福帳の半分ぐらいの大きさで,金品を受取ったという証拠に先方に印を押させるもので,後日の紛争を避ける目的をもっていた。1枚物と違って綴じてあるので紛失の心配がなく,広く用いられた。しかし商業の発達による近代簿記の普及につれて,次第にその姿を消していった。

(出所)コトバンク

 

 

 

 

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