オウブンシャホールディング事件―255億円の含み益の行方はいかに―

以下の判例は、太田洋(2016)「法人税法22条2項にいう『取引』の意義―オウブンシャホールディング事件」『租税判例百選[第6版]』別冊ジュリ228号 ㈱有斐閣 p100-101を参照させて頂いています。

☆複雑な事例になるため、TOMOYUKIが事件の概要を解説しています。☆

TOMOYUKI
2/22(金)21時にYouTubeライブで解説した動画になります。

課題判決の概要

概要を確認する。
【登場会社の整理】

X=オウブンシャホールディング社←日本

A=アトランティック社(Aの100%出資会社)←オランダ

B=アスカファンド社(公益財団法人・Xとの直接出資)←オランダ

※センチュリー文化財団を中心にXとBは関係会社の関係となっています。

 

 

【取引の流れ】

事件前にXがオランダに所有している株式で100%の現物出資を行った。
※この際、Xは時価と簿価の差額を圧縮記帳して利益の繰り延べを行っていた。(改正前法人税)

AがBに対して著しく有利な価額で第三者割当て増資を行った。
※発行済株式の15倍の新株を発行している。

その結果、XのAの持分比率は100%から6.25%に低下した。
※この際にAからBへ移転した含み益の価値は255億円と言われている。

当時のオランダの税制下では価値の移転についてまったく課税されていなかった。
※さらに、当時、受増益は、タックス・ヘイブン対策税制の適用を受けなかった。

 

課題判決の原文

判決の原文を見る。
最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決(平成16年(行ヒ)第128号:法人税更正処分取消請求事件)

原審差戻

TOMOYUKI
最高裁判決では、2審の判決内容のうち、移転した金額の算定方法について再計算するため差戻しが行われました。

(i)Xは、A社の唯一の株主であったというのであるから、第三者割当により同社の新株の発行を行うかどうか、だれに対してどのような条件で新株発行を行うかを自由に決定することができる立場にあり、著しく有利な価額による第三者割当増資を同社に行わせることによって、その保有する同社株式に表章された同社の資産価値を、同株式から切り離して、対価を得ることなく第三者に移転させることができたものということができる。そして、Xが、A社の唯一の株主の立場において、同社に発行済株式総数の15倍の新株を著しく有利な価額で発行させたのは、XのA社に対する持株割合を100%から6.25%に減少させ、B社の持株割合を93.75%とすることによって、A社株式200株に表章されていた同社の資産価値の相当部分を対価を得ることなくB社に移転させることを意図したものということができる。また、前記事実関係等によれば、上記の新株発行は、X、A社、B社及び財団法人Cの各役員が意思を相通じて行ったというのであるから、B社においても、上記の事情を十分に了解した上で、上記の資産価値の移転を受けたものということができる。

(ii)以上によれば、Xの保有するA社株式に表章された同社の資産価値については、Xが支配し、処分することができる利益として明確に認めることができるところ、Xは、このような利益をB社との合意に基づいて同社に移転したというべきである。したがって、この資産価値の移転は、Xの支配の及ばない外的要因によって生じたものではなく、Xにおいて意図し、かつ、B社において了解したところが実現したものということができるから、法人税法22条2項にいう取引に当たるというべきである。

 

課題判決で課税認定された流れ

流れを確認する。
①XがAの唯一の株主であるため、Aが誰に対してどのような条件で新株発行するか決めることが出来る。

②A社が行ったB社への新株発行は、現物出資した株に係る含み益の相当部分を無償でB社に移転させたと言える。

③Xが現物出資した株は、Xが支配し、Xにおいて意図し、かつ、B社において了解され実現した。

④法人税法22条2項における『取引』に該当する。

TOMOYUKI
法人税法22条2項はいわゆる法人税法上の収益について規定しています。そのうち「無償による資産の譲渡」にあたるとして取引と認定されました。今回の取引のポイントは、Xは直接は何の取引も行っていないにも関わらず、取引の当事者として課税されるかどうかというところでした。

 

 

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