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弁護士報酬を給与で申告!?ややこしいや~~―事業所得と給与所得の区分―

以下の判例は、奥谷健(2016)「不動産所得と譲渡所得の区分」『租税判例百選[第6版]』別冊ジュリ228号 ㈱有斐閣 p72-73を参照させて頂いています。

☆TOMOYUKIが事件の概要を解説しています。☆

TOMOYUKI
3/16(土)21時にYouTubeライブで解説した動画になります。

課題判決の概要

概要を確認する。

今回の事件は、今から約40年前の昭和52年に最高裁判決が下された所得区分の判例を題材にしています。

現在では、何が給与所得で何が事業所得になるのかある程度分類がされていますが、その根拠となるのは過去の判例であったり通達になります。

通達は過去の判例などをベースに作られていますので、実務上の判断は判例も重要となります。

そこで、今回の判例は租税判例百選にも収録されていて給与所得と事業所得の区分について一定の基準を示した判例と言われています。

弁護士報酬、その他税理士報酬など今では事業所得として処理するのが普通というか当然ですが、この事件では弁護士報酬を給与所得として申告されています。

今ではあり得ない処理を行ったことについて税務署が待ったを掛けたことが事件の発端になります。

 

課題判決の原文

判決の原文を見る。
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(昭和52年(行ツ)第12号:所得税更正決定処分取消請求事件)

上告棄却

ⅰ)およそ業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得(同法27条1項、 同法施行令63条12号)と給与所得(同法28条1項)のいずれに該当するかを判断するにあたっては、租税負担の公平を図るため、所得を事業所得、給与所得等に分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならない。したがって、弁護士の顧問料についても、これを一般的抽象的に事業所得又は給与所得のいずれかに分類すべきものではなく、その顧問業務の具体的態様に応じて、その法的性格を判断しなければならないが、その場合、判断の一応の基準として、両者を次のように区別するのが相当である。すなわち、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇傭契約(こようけいやく)又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが 重視されなければならない。

 

ⅱ)事実関係のもとにおいては、本件顧問契約に基づきXが行う業務の態様は、Xが自己の計算と危険において独立して継続的に営む弁護士業務の一態様にすぎないものというべきであり、前記の判断基準に照らせば右業務に基づいて生じた本件顧問料収入は、所得税法上、給与所得ではなく事業所得にあたると認めるのが相当である。

 

 

用語についての補足説明(国税庁HPリンク参照)

雇傭契約(こようけいやく)

 

課題判決で課税認定された流れ

流れを確認する。

①弁護士報酬について給与所得として取り扱って確定申告をしていた。

②最高裁判決によって、事業所得と給与所得について一定の基準が示された。

③事業所得とは、以下のような特徴を有する。

・独立性
・営利性
・有償性
・反復継続性

④給与所得とは、以下のような特徴を有する。

・雇傭契約
・使用者の指揮命令に服す
・労務の対価

⑤給与所得は、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるかどうかで判断されるものであるため、今回の事案については、事業所得に該当する。

 

 

 

p.95参照の給料or外注チェックシート

①キャストが酒代や場所代、用具代や衣装代を負担しているか

 

②キャストが通勤するための交通費はキャスト自身が負担しているか

 

③キャストが業務を執行する時間や場所についてキャスト自身が選択できるか

 

④キャストが契約している以外の業務や雑務を行うことはないか

 

⑤キャストは店側の指揮・監督を受けず、裁量をもって業務が執行されているか

 

⑥キャストと専属的な契約になっておらず、他店と取引することを禁じていないか

 

⑦キャストは報酬を自ら計算して店側に請求しているか

 

⑧キャストが売上の代金を回収できない場合にキャストが未回収分を負担しているか

 

⑨キャストが従業員と同様の福利厚生、時間外手当や賞与の支給を受けていないか

 

⑩キャストへの報酬の最低保証がないか

 

⑪キャスト自身が確定申告をしているか

 

上の項目にYESが一つでも多いほど外注と認められる可能性が高い

TOMOYUKI
YouTubeライブ内で給料と外注の判断基準として松本税理士の書かれた風俗業限定最強の「節税」のチェックシートを参考に引用しています。風俗業だけでなく、建築業など判断が難しい実務上での判断に役立つシートになっています。

 

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